トップへ戻る

Lettre de Paris

「パリからの手紙」では、さまざまな角度からパリ「衣・食・住」情報を毎月5日に、
ラボラトワールからスタッフやクリストフ・フェルデール氏との開発秘話などの情報は毎月20日に、
あわせて月2回お届けする予定です。

砂糖

甘い誘惑

「日本料理にはなぜ、デザートがあまりないの?」。フランス人からよく投げかけられる質問のひとつです。フランス料理には、日本料理のように砂糖が使われていないため、食事の最後に甘味が必要との説もありますが、フランス人は男女、そして年齢を問わず、食事の最後に甘いものを口に入れないと食事が終わった気がしない、という人が圧倒的に多いのです。

このように、食事と甘いものが切っても切れないフランス人にとって、砂糖の消費量は一体どれぐらいなのかといえば、じつは、一人当たり年間の砂糖消費量はほぼ横ばい傾向。戦後に30kgを超え、1970年代には36kg。1990年代には35kg前後と落ち着いたものの、2000年代は40kg前後で推移し、2009年は約39kgでした。一方、日本は、2000年代を通してずっと18.4kg。フランス人の半分以下なのです。調査の結果、砂糖の消費に関して、フランスと日本の意外な共通点もありました。消費される砂糖の8割が、お菓子や飲料などに含まれている加工品であるということ。家庭で使われているのは、わずか2割だそうです。料理に砂糖を使わないフランスでも日本と同様の割合の砂糖を家庭で使うということは、それらはすべて「料理以外の用途」で砂糖を使っていることになります。となると、多くのフランスの家庭でお菓子づくりをしている図を想像してしまいますが、身近なフランス人の生活を観察する限り、まんざら当てのない推測とも言えないように思えます。

ところで、和三盆、沖縄の黒糖をはじめ、日本には日本ならではの砂糖がありますが、フランスにも、カソナードcassonadeとヴェルジョワーズvergeoiseというフランス生まれの砂糖があります。前者はサトウキビが原料で、精製していないため不純物が残り、褐色をしています。スーパーマーケットで白糖と並んで売っていて、家庭では、白糖の代わりに使ったり、クレープにかけたりしています。

そしてヴェルジョワーズは、ビート(テンサイ)から作られます。ビートの絞り汁を過熱・圧縮して結晶化した砂糖をとり除き、残ったシロップを再び煮詰めたもの。カソナードと同じく褐色ですが、さらさらしていると同時に、湿った感触。平らなブリオッシュのようなタルト・オ・シュークルtarte au sucre、バターとミックスして薄いゴーフルにはさんだゴーフル・ア・ラ・ヴェルジョワーズgaufre à la vergeoiseなど、とくにベルギー国境の北フランスの特産菓子に使われています。

ちなみに、意外に思えますが、ビートを原料とした砂糖の生産量は、フランスが世界1位。サトウキビの栽培地として知られるレユニオン島やマルティニーク島も、フランスの海外領土ですから、フランスは、まさに砂糖に恵まれた国といえますね。

繊細なパティスリー、朝食に欠かせないコンフィチュール、やわらかいキャラメルなどなど、砂糖が重要な役割を果たしていることは、みなさんもご存知でしょう。一方で、シュー生地にカリカリとしたあられ糖をかけたシューケットchouquetteや、グラニュー糖とバターのクレープcrêpe beurre-sucreなど、砂糖をかけただけで、おいしさが際だって食感も楽しめる、そんなシンプルなデザートの味わいも、また格別です。

甘い食べ物をさすフランス語の一つが、ドゥスールdouceurs。やわらかい響きのこの単語の本来の意味は、「優しさ」「温和さ」で、最後にsをつけて複数形にすると、「甘いもの」の意味になるのです。まさに、幸せと優しい気持ちをたくさん運んでくれる、お菓子を指すにはぴったりの単語だと思いませんか?

※独立行政法人・農畜産業振興機構(日本)、砂糖研究資料センター(CEDUS、フランス)の調査より

〈文・三富千秋/フランス パリ在住〉

ARCHIVES (パリ情報)
  • 牛乳
  • 川
  • 砂糖
  • 店
  • 坂道
  • 季節
  • パン
  • 椅子
  • 演劇
ARCHIVES (パリラボ通信)
  • ベルギー視察旅行
  • パリのベスト「パリ・ブレスト」!
  • パティシエのサンドウィッチ
  • カフェ・スイーツ新連載
  • そば粉のクレープ
  • 夏のデザート
  • パリ・ブランシェ
  • 夏のバカンス
このページの先頭へ